羊たちの沈黙 服を大事に、は言葉遊び? 名作の理由を星条旗や男性との関係性から考察! タイトルの意味、主要キャストも!

この映画が観たい!

映画『羊たちの沈黙』はホラーでもサイコスリラーでもありません!「服を大事に」の意味、なぜ名作と言われるのかを星条旗をモチーフに選んだ理由、クラリスと男性たちとの関係性を解説しつつ考えてみました。タイトルの意味についても考察!どうぞ最後までお付き合いください!

羊たちの沈黙 服を大事に、は言葉遊び?

映画開始後1時間あたりで、誘拐されたキャサリンの母がレクターと対面するシーンがあります。レクターから誘拐犯のバッファロービルの情報を聞き出すためです。

レクターは彼女にバッファロービルの身体的特徴などを伝え、最後にこう言います。

「”服”を大事にな」

原語では「Love your suit」。レクターはバッファロービルに直接会ったことがあり、彼の狂暴性は把握済み。

そんなレクターにとって、キャサリンが殺害され、その皮が服に変換されることは容易に想像できます。

「もしその服を着ることがあったら、あんたの娘の”一部”なんだから大事に着てやれよ」、とでも言いたいのでしょう。

レクターは知的、そして言葉遊び好き。彼の元患者の名前やバッファロービルの本名をクラリスに伝える時も、単語をいじったものを伝えています。

元患者の名前は“rest of me”(意味:私の一部)をいじって”Mofet”、バッファロービルの本名は”Fool’s gold”(意味:黄鉄鉱→食わせ者、まがい者)をいじって”Louis Friend”。

「”服”を大事にな」も、そんなレクターにとっては言葉遊びの一つ、またはクラリスの実力を試してるのもあるでしょう。

”服”をdressやclothingではなくsuitにしたのは、上院議員という職業上、スーツを着ている時間が一番長いからだと思います。

羊たちの沈黙 なぜ名作と言われるのか?

クラリスの視点で描かれているシーンが多いので、彼女の立場で見聞きした物、会話の時の様子にフォーカスして考察していきます。

多くのモチーフが使われてますが、その中で「星条旗」を取り上げてみます。意味もなく撮影されるシーンはないと思うので、”メッセージ”と解釈してみていきます。

まずは冒頭、クラリスがトレーニング中に見る「苦しさ、悶え、痛み、苦痛を愛せ」を覚えておいてください。

名作の理由① 星条旗は何を意味する?

クラリスが星条旗を見るシーンが2つあります。1つ目はレクターの貸倉庫の中。2つ目はバッファロー・ビルの自宅。2つ目は硫黄島の星条旗をモチーフにしたものです。

国旗は忠誠心を表します。FBIという国の機関で働こうとしているクラリスの思いですね。クラリスは成績優秀でトレーニングもきちんとこなす真面目な性格なので、忠誠心も強いでしょう。

ただFBIという職場は男社会。FBIアカデミーの教師や生徒もほとんど男性です。つまり男性と上手く人間関係を築く必要があるのです。

それを踏まえて次章からクラリスと男性達との関係性を、重要度が高い順から並べました。

名作の理由② クラリスと男性達との関係性

父親との関係性

幼少期に母を失い、10歳で”すべてだった”父を殺害され孤児になったクラリス。

父に甘えたかった時、頼りにしたかった時、なぐさめて欲しかった時にもういなかったことは、男性に対するトラウマと、被害者家族への高い共感があると想像できます。

実際、父のフラッシュバックシーンが2つあります。1つ目はレクターと初めて精神病院で接見した際、触れて欲しくない生い立ちをいじられます。

さらに他の患者から卑劣なことをされた後、駐車場で父との何気ない日常を思い出して泣き出します。

「こんなとき父がいてくれたら…」という思いでしょう。

2つ目はすでに殺害された女性の自宅に入った際、父の葬儀の記憶が込み上げてきます。クラリスの父も殺害されてるので、この被害者家族の辛さは痛いほど分かるでしょう。

自身の最も辛い過去が、仕事上嫌でもほじくり返されるのです。

クロフォード主任との関係性

クラリスはクロフォード主任を上司として尊敬し、彼の元で働きたいと言っています。しかし彼の方は、超危険人物のレクターにクラリスを会わせる時も「お使い (errand)」と言います。

成績優秀ですが立場はまだ実習生のクラリス。超危険人物に会わせる際に使う言葉としてはやや不適切な気がします。

バッファロービル連続殺人事件解決を祝うパーティでの握手のシーンも印象的です。クロフォード主任がクラリスの手をぎゅっと握るのは、性的な誘いか、俺より偉くなるなよ、のどちらかでしょう。

しかもパーティは苦手だからと言って、すぐに帰ってしまいます。最終的にバッファロービルを仕留めたのはクラリスです。いくらなんでもちょっと冷たすぎやしないかと。

ただこのパーティでのクラリスのシャツとジャケットの色は、クロフォード主任のものと一緒。クラリスの「男並みにバリバリ働きますよ」の野心です。

握手の時、クラリスはやや動揺します。「クロフォード主任は君が好きだぞ」とレクターがクラリスに言ってましたからね。

上司以上の関係は持ちたくないでしょうが、避けるわけにはいかない。認められたいし、出世したい野心もある。

クラリスはこの矛盾と戦っているのです。

レクターとの関係性

レクターのような高度に知的で、人の心の状態を読むのが上手い人物との交渉は至難の業です。クラリスも初対面で生い立ちを言い当てられ、さらにクラリスがどう感じているかまでズケズケと言われました。

真面目なクラリスは、個人情報は絶対に話すなとクロフォード主任から言われてましたが、キャサリン救出のためにトラウマの根源である父を失った時のこと、親戚や子羊の悲鳴のことを話します。

バッファロービルを何としてでも逮捕せねば、という強迫感。3日期限という切迫感の両方のプレッシャーに押しつぶされそうな痛々しい表情です。

個人的な、しかも最も話したくないことをレクターに話したのにバッファロービルの本名を教えてくれない苛立ちと焦り。

そんなクラリスをレクターはもてあそぶかのように、「子羊の悲鳴が鳴り止んだら教えてくれ」と言います。

この2人の関係から分かることは、FBIで働くことはとんでもなくメンタルをやられる、ということです。

羊たちの沈黙 名作と言われる理由のまとめ

クラリスと父親、クロフォード主任、レクターの関係性から言えることは、女性は弱い立場にある、そして何より、クラリスはそこまで強い人間じゃない、ということ。

強いどころか、父を亡くして10年ぐらい経っているのに未だ完全に立ち直っておらず、思い出しては泣いている。

クロフォード主任のような、上司という立場を利用して誘いたいのか、よく分からない態度を取ってくる人からも嫌われず、でも変に好かれず付いていかなきゃならない。

FBIで働く以上は、普通の職場であればまず出会うことすらないレクターのようなモンスターと関わらなきゃいけない。

つまりクラリスはそこまで強くなく、男性にトラウマを抱えていて、殺害という形で家族を失う痛みを知っている女性。

そんな女性がFBIという殺人や凶悪事件を扱う職場で心を抉られながら、葛藤しながら、泣きながら事件解決に向かって食らいついて行く姿に心打たれるんだと思います。

羊たちの沈黙 タイトルの意味

私は最初、なぜ羊たちの「悲鳴」じゃなく「沈黙」なのか?と思っていました。キリスト教における生贄の意味においては、子羊とは犠牲になった女性たちのことでしょう。

もう生きていないので「沈黙」にしたかもしれないですが、そうすると一連の連続殺人がすでに過去のもので、事件は解決済みになっているように感じます。

そこで「沈黙」とは、今現在も聞こえてくる悲鳴を止めたいというクラリスの切望じゃないかと考えます。

FBIじゃなくて他の職場でもいいのに、と思いますが、そこはレクターが分析した通り、クラリスは明言してませんが彼女が思い描く理想の自分があり、それを強く望んでいるはずです。

だからクロフォード主任のような上司もレクターのようなモンスターとも対峙し続ける。でも辛くて夢の中でも泣いてしまう。それをあの時の子羊の悲鳴と ”思いたい” のではないでしょうか。

誰にでも譲れないものはありますからね。だから矛盾が生まれ、それと葛藤しているわけです。これは昔も今も同じ。クラリスに共感したり、共通点を誰もが少しは見つけてると思います。

こういった不変的なものがこの映画を古くさせないんだと思います。

ではここで最初のあのフレーズ「苦しさ、悶え、痛み、苦痛を愛せ」を思い出してください。最初にバッチリ明言されてますね、悲鳴は止みません、と。

羊たちの沈黙 主要キャスト

ではここで『羊たちの沈黙』の主要キャストと大枠のあらすじをおさらいです。まずは主要キャストから。

★クラリス・スターング(ジョディ・フォスター)…FBI実習生。若い女性が犠牲になっている一連の連続殺人事件の捜査を、レクターからの僅かなヒントを元に鋭く推理を立て、進める。

★レクター(アンソニー・ホプキンス)…戦争で両親を失い、溺愛していた妹は飢えていた大人たちによって食肉にされた。精神科医になったが、患者を殺害して臓器を食べるという猟奇殺人で逮捕され、精神病院で終身拘束となった。

★バッファロービル…一連の連続殺人犯。女性を殺害してその皮で服を作る。幼少期を施設や祖父母の家で過ごす中で、数年間に渡り継続的に虐待を受けてきた。12歳で祖父母を殺害し、精神病院に入院中に縫製を学んだ。

★クロフォード主任…FBIアカデミーの主任。一連の連続殺人犯に関しレクターに手掛かりやヒントもらおうとしたが拒絶されたため、クラリスにその役割を課した。クラリスに妙な気持ちがある様子。

★チルトン院長…レクターが収容されている病院の院長。レクターから目の敵にされている。クラリスにセクハラめいた発言をする。

 

本作品は、アカデミー賞で主要5部門(作品賞、監督賞、主演男優賞、主演女優賞、脚本賞)を受賞。

ジョディフォスターは、『フォー・ザ・ボーイズ』のベット・ミドラー、『テルマ&ルイーズ』のリドリー・スコットとスーザン・サランドンと競っての主演女優賞でした。

主演のジョディ・フォスターの若い頃のページもぜひご覧ください!

ジョディ・フォスターの若い頃~全盛期 かわいい娼婦役、スト―カー事件、告発の行方、羊たちの沈黙の撮影秘話、結婚や子供の父親、wilki風プロフも!
ジョディ・フォスターは、若干13歳で映画『タクシードライバー』で娼婦役を演じアカデミー賞にノミネートされた天才肌女優!3歳で文字が読め子役スタートして一家を支えていた若い頃のライオン事件、スト―カーの恐怖、映画『告発の行方』、『羊たちの沈黙...

今日も最後までお読みいただきありがとうございました。

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