『名探偵ポワロ』シーズン1#2の『ミューズ街の殺人』(Murder in the Mews) は、ある花火の夜に起きる一ひねりある珍事件。
当時1920~1930年代のおしゃれなファッションやインテリアもチラリとみることが出来るエピソードです。どこよりも分かりやすい解説です。どうぞ最後までご覧ください!
ミューズ街の殺人 ネタバレなしあらすじ
花火大会で通りが賑わう夜、ミュー街の一角で女性の遺体が発見された。
彼女の名前はバーバラ・アレン。第一発見者は同居人の女性ジェーン。
アレンは左手に銃を持ち、左こめかみには銃傷。
部屋は密室で鍵は見当たらないことから、自殺より他殺の可能性が高いとして捜査が始まった。
第一発見者のジェーンは週末から留守にしていた。
インド帰りのアレンのことを心優しい女性と言い、好感を持っているようだ。
アレンには議員の婚約者がいたが、婚約者バーバラの死に知らせを聞いても世間体の方を気にする男。
アレンが亡くなった日は彼女に会っていなく、アリバイはあるようだが証明できる者はいない
アレンとインドで出会ったユースタス少佐は、アレンが亡くなった当日に彼女に会っていたことが分かった。
ジェニーやアレンの婚約者によると彼は評判が悪い。金銭的な問題もあるようだ。
ユースタス少佐が一番怪しいと推理していたが、意外な結末に。
ミューズ街の殺人 解説 右利き? 左利き?
アレンの利き手は右?それとも左?と混乱するドラマですね。でもそれがキーポイントです。
結論、アレンは左利きです。左手に銃を持ち、左こめかみを自分で撃って自殺しました。
左利きだったので腕時計は右腕に付けていました。
ポワロは「時計は左腕にするのが普通だ」と言いますが、利き腕と反対の腕に付ける説の方が有力ではないでしょうか?
ポイントは、ジェーンはアレンの死を自殺ではなく他殺に見せたかったのです。
自分で撃ったのではなく、誰か(ユースタス少佐)に撃たれた、と見せかけたかったのです。
アレンは左こめかみを撃ちました。これは変えようがありません。ジェーンは銃の指紋を拭き取り、また左手に戻しました。
指紋を拭き取った理由は、仮に誰かが彼女を撃ってそれを自殺と見せかけたい場合、自分の指紋を消して証拠隠滅するからです。
指紋を拭き取ることで、これは殺人です、とアピール出来るのです。
銃の下りではアレンは左利きだと誰もが思うでしょう。それだと自殺として処理されてしまいます。
そこでジェーンは、机上の筆記用具の左右を変えたのです。
ペンやカレンダーを左から右に移し、アレンは右利きだったとアピールしたのです。
右利きの人ならば右手に銃を持って頭の右側を撃つのでは?
なのにアレンは頭の左側に銃傷があり、銃は左手で握っている。
これはアレン以外の、右利きの何者かによる殺害だ、と警察に思わせるためのジェーンによる偽装工作でした。
アレンの婚約者は、アレンが左利きか右利きかも知りませんでした。ポワロには右利きだったと間違ったことを言っています。
そんな人だとジェーンは知っていたので、彼を警戒していなかったと思います。
しかし戸棚を開けるように言われると動揺しました。中にアレンの左利き用のゴルフクラブがあったからです。
左利き用のゴルフクラブをポワロに見つけられると都合悪い。
そこで彼女は怪しまれずに処分するためにゴルフコースに行き、イラついてゴルフクラブをへし折る人が捨てたようにして処分しました。
さらに、右利き/左利きが関係ないトランクを、それらが関係あるゴルフクラブと一緒に処分することで、ゴルフクラブだけを意図的に処分したと思われないようにしました。
シートや遺書はもちろん破棄です。居間にあったユースタス少佐のカフスボタンと吸い殻が入った灰皿を、アレン婦人が亡くなっていた彼女の部屋に運びました。
同じ部屋にある方がより自然に殺人だと思われます。
ポワロが最初に現場検証した際に、「消えた物と加えた物がある」と言いましたが、消えた物は遺書とシート、加えた物はボタンカフスと吸い殻が入った灰皿でした。
ユースタス少佐という悪い男に引っ掛かり、別れ、新たな男性と知り合って婚約したのに、再びユースタス少佐が現れて、自殺。
遺書の内容は分かりませんが、何か弱みを握られていたのでしょうか?
ジェーンは何か複雑なものを抱えているような雰囲気でしたが、親友アレンのためにあそこまで行動したのは驚きでしたね。ゴルフウェアはおしゃれでしたけど(笑)
ミューズ街の殺人 キャスト、原作者のプロフィール
≪キャスト≫
①エルキュール・ポワロ…エナメル靴と胸元のブローチが定番スタイルのおしゃれな私立探偵。
私の印象は、話し方や立ち振る舞いがかわいいおじ様。
そんなポワロを演じるのは、1946年ロンドン生まれのデヴィット・スーシェ。
大当たりしたポワロ役のため、苗字をフランス語読みのスーシェに改名しました(ポワロはフランス語圏出身)。
撮影セットの本の並び順にもこだわったりと、ポワロに負けないぐらいの仕事に対して熱い情熱を持った俳優なんです。
改名するって、普通に考えて凄いことですよね!
②アーサー・ヘイスティング大尉…ポワロの助手。マイペースで、ポワロに呆れた顔をされても気にしていないところが個人的には好きです。
そんなヘイスティングを演じるのは、1945年ロンドン生まれのヒュー・フレイザー。
ドラマ『101 Dalmatians』、『切り裂きジャック』、『ファイヤーフォックス』等に出演しています。
演じるだけでなく、監督や脚本も手掛けているので実はとても多才な俳優なんです。ヘイスティング役とのギャップが面白いと私は思います。
③ジェームス・ハロルド・ジャップ警部…ポワロを慕っているのか疎ましく思っているのかイマイチ分からないロンドン警視庁の主任警部。
無表情で不愛想、でもそこが妙にいい味出してると私は思います。警部なのですが推理力はポワロには敵わない(笑)
そんなジャップ警部を演じるのは、1948年イングランド ノッティンガム生まれのフィリップ・ジャクソン。
ドラマ『ブラス』、『マリリン7日間の恋』、『鑑定士と顔のない依頼人』等に出演。
俳優だけでなく、ジャズをラジオで披露する腕前の持ち主なんです。どんな表情で演奏しているのか、個人的に興味ありますね。
④ミス・レモン…ポワロと微妙な距離を置きながらこだわりが強いポワロの元で働いている秘書。
仕事熱心でポワロから信頼されていますが、決して調子に乗らない慎重派。
そんなミス・レモンを演じるのは、1947年イングランド ランカシャー生まれのポーリン・モラン。
映画『The Good Soldier』、『The Woman in Black』、『Byron』等に出演しています。
が、私がすごく意外なのは、何とバンドを組んでいたんです!
メンバーは全員女性の『The She Trinity』というバンドでベースを担当していました!あの輪っか前髪のミス・レモンが!
しかも、1987年からプロの占術師としても活躍中。意外要素が多すぎですね。個人的には4人の中で一番興味でそそられます。
⑤バーバラ―・アレン…インド滞在経験がある若い女性。レイヴァートン・ウエスト議員と婚約していたが、自室で銃で頭を撃って死んでいるところが発見された。
⑥レイヴァートン・ウエスト議員…バーバラ・アレンの婚約者。バーバラの死を知った時、悲しむよりもスキャンダルを懸念していた。
⑦ジェーン・プレンダーリース…バーバラ・アレンと同居していたプロフォトグラファーでバーバラ死亡の第一発見者。バーバラは優しい人だと好感を持っていた。
⑧ユースタス少佐…インドでバーバラ・アレンが知り合った男。バーバラ・アレンに投資話を持ち掛ていた。バーバラ死亡の晩に彼女の家で会っていた。
アガサ・クリスティー(1890₋1976)は、イギリス デヴォン州の裕福な家庭生まれ。
私はとても驚いたのですが、書字障害と恐らくディスレクシアもありました。
兄と姉は通学させてもらいましたが、アガサ・クリスティーだけは母の意向により通学させてもらえず。
しかし、5歳の頃から父宛ての手紙をこっそり読んで自分で文字を覚えました。
なぜ母は彼女だけ通学させなかったのか分かりませんが、自分で文字を覚えたという事はやはり優秀な方だったと私は思います。
アガサ・クリスティーの初の長編推理小説は1920年の『スタイルズ壮の怪事件』でした。
1976年に亡くなるまでほぼ毎年本を出版したパワフルな女性。毎年って、すごいペースだと私は思います。
36歳の時に11日間の失踪騒ぎを起こしたことでも有名。いかにもミステリー小説作家らしいと私は思います。
失踪した理由は、母の死や夫の浮気でひどくショックを受けていたとの諸説あり。
いくらミステリー小説の女王とはいえ、傷付く時は普通の女性と一緒なんだな、と私は思います。
この夫とは離婚し、考古学者の男性と再婚しました。やっぱり謎めいたもの好きだったのですね。
今日も最後までお読みいただきありがとうございました。
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