『刑事ダルグリッシュ』は、イギリス発の人気刑事ドラマです。詩人でもあり、妻子を亡くしたダルグリッシュ刑事中心に事件を解決に導いていきます。『ナイチンゲールの屍衣』は、人里離れた場所にある看護学校が舞台。キャスト、前編・後編あらすじ、解説、P・D ジェイムズの生い立ちも解説します!
刑事ダルグリッシュ ナイチンゲールの屍衣のネタバレなしあらすじ(前編)
舞台は1970年代の人里離れた場所に建つナイチンゲール看護師養成学校。ある日、牛乳を使った経管実習中に患者役の看護学生のピアースが突然苦しみ出して死亡した。
苦しむ彼女を助けようと開胸したブリックス先生。刑事ダルグリッシュは不適切な処置を行ったとして彼を疑う。さらにトイレから殺虫剤が無くなっていた。これに気づいたのはマドリン。
ピアースは他の生徒とあまり交流がなかったが、聖書を読み信心深かったという。しかし人の弱みに付け込む一面も。実習が始まる前、枕の下から何かを奪った者はいないか?と皆に確認していた。
部屋を調べると、女囚の支援活動のチラシが見つかります。ダルグリッシュ刑事とマスターソン巡査部長は、トイレから無くなっていた殺菌剤による毒殺と推理。
看護学生や職員から聞き込みを進める中、看護学生同士、看護学生と職員、職員同士の人間関係は複雑で秘密も多いことが分かってきます。
殺害された看護学生を嫌っていた人物もチラホラ。捜査を進める中、看護学生の一人が突然の逃亡。理由を聞くとピアーズからある弱みを握られており、それをネタに脅かされていた。
事情聴衆中の発言からある人物が一番怪しいと思っていたところ、新たな不審死が起きます。
刑事ダルグリッシュ ナイチンゲールの屍衣のネタバレなしあらすじ(後編)
新たに亡くなっていたのはファロンでした。検死の結果、毒殺と判明。さらに妊娠していたことも判明します。上品で大人しく、成績優秀。彼氏がいたとの証言も出ています。
事情徴収中、マドリンはピアースの件で、いつも聖書しか読まない彼女が聖書以外のものを読んでおり、それを枕の下に隠したように見えた、と証言。
さらにピアースの死後に彼女宛てに届いた手紙から、担当患者の中にある程度親しく会話していた患者がいたことが分かります。
この患者はすでに亡くなったため、患者の母親にピアースが何か話してないか、マスターソン巡査部長が聞き取りに向かいます。
母親から聞き取った内容は大きな収穫でした。ピアースがこっそり読んでいて思わず枕の下に隠した本は何だったのか、その本が無くなってしまったのになぜ満足した表情をしたのか。
さらに無くなっていたバラ用の殺虫剤が意外な場所から見つかったこと等を基にダルグリッシュ刑事は推理を立て、ある人物に的を絞ります。
不意に突然男から襲われる刑事ダルグリッシュ。庭の小屋で不審火で起き、ファロンは自殺したと言っていたある人物、刑事ダルグリッシュが目星をつけていた人物が焼死体で発見されます。
刑事ダルグリッシュ ナイチンゲールの屍衣の解説 執着の代償とは?
ブラムフェット教官を殺害したのはテイラー看護師長で、ピアースとファロンを殺害したのはブラムフェット教官でした。
テイラー看護師長の本名は「イルムガルト・グローベル」。「メアリ・テイラー」は、脱獄後の身分を隠すための偽名です。
それを最初から知っていたのはブリックス先生とブラムフェット教官。ブリックス先生はその事を刑事ダルグリッシュに気付かれ、何等かの罪となるのを恐れて彼を襲ったのでしょう。
ブラムフェット教官はテイラー看護師長に異様な執着心があり、脱獄の事実をネタに彼女に付きまとっていました。
そこに人の弱みに付け込むピアースです。彼女が担当していた元患者は、戦後の軍事裁判でイルムガルト・グローベルが十数年間服役の判決を受けていた事を知っていて、それを母に話していました。
しかしここで勘違いが。元患者は「イルムガルト・グローベル=テイラー看護師長」のつもりで母に話したのですが、ピアースは「イルムガルト・グローベル=ブラムフェット教官」として理解していたのです。
ピアースはまず確かな証拠を掴もうと、図書館でナチスの軍事裁判記録に関する本を借ります。自分が借りたことを隠すためにファロンの図書館カードで借ります。
ピアースの脅し癖は誰もが知っていたので、もしそんな変わった本を借りてることがブラムフェット教官以外の先生の耳に入ったら、恐らく質問攻めとなるでしょう。
ブラムフェット教官は実習の患者役がファロンからピアースに変更されたと知ると、ギアリング教官のバラ用の殺虫剤で”凶器”を作ります。トイレの殺菌剤のくだりは捜査を紛らわすためと思います。
ブラムフェット教官はピアース殺害後、捜査を煙に巻く為にファロンも殺害。ファロンが妊娠していた事を知っていたので、「恥じて自殺」説を皆信じるだろうという気持ちもありました。
最後はテイラー看護師長がブラムフェット教官を殺害。ピアースとファロンはブラムフェット教官が殺害したとはいえ、もしブラムフェット教官が逮捕、尋問されれば自分の過去をポロリと喋るリスクが。
ピアースの枕の下から無くなった本ですが、ナチスの軍事裁判記録に関する本で間違いないです。これを取ったのはブラムフェット教官だと思います。
彼女以外に取る理由がある人はいません。本が無くなったにも関わらず満足げな表情をしたのは、ブラムフェット教官に対する嫌がらがを楽しんでいたのでしょう。
”こんなにあなたの事をちゃんと調べてますからね”という気持ちだったのだと思います。
刑事ダルグリッシュ ナイチンゲールの屍衣のキャスト
★刑事★
①アダム・ダルグリッシュ刑事(バーティ・カーベル)…ロンドン警視庁犯罪捜査課。高い知性と鋭い洞察力の持ち主、詩人でもある。妻は初めての赤ちゃん(男の子)を分娩中に死亡し、赤ちゃんも間もなく死亡した。
②マスターソン巡査部長(ジェレミー・アーヴァイン)…アダム・ダルグリッシュ刑事の部下。上司のダルグリッシュ刑事に追いつこうと頑張っている。
★看護学生★
①ヘザー・ピアース…経管実習中に突然苦しみ出して死亡。後に、牛乳だったはずのものが殺菌剤にすり替わっていたと判明した。
②クリスティーン・デイカーズ…ピアーズの死にとても動揺していた。退院したファロンに紅茶用のお湯を注いであげた。女囚の支援活動のチラシを持っていた。
③ジョセフィン・ファロン…ウィスキーを飲んでいることをピアーズに知られ、それをネタに脅かされていた。ピアーズ死後3日後に部屋で死亡していた。
④マドリン・グッデイル…結婚を控えており看護試験に合格したらこの学校を出る予定でいた。ファロンが死亡する日の0時頃、彼女の部屋の明かりが付いているのを見た。
⑤ジュリア・パードゥ…規則を破って男性を部屋に入れているところをヘザーに見られ、それをネタに脅かされた。ヘザーをやや嫌っていた。ブリックス先生と男女の関係。
⑥モーリーン・バート&シャーリー・バート…双子姉妹。実習では看護師役だった。実習に使った道具は2人で揃えた。
★職員★
①ブリックス先生…パードゥと男女の関係。ピアーズが突然苦しみ出して死亡後、開胸処置をした。
②ギアリング教官…自分とモラグしか保管場所を知らないはずのバラ用の殺虫剤がいつの間にか無くなっていた。ピアースとファロンの死を一番悲しんでいるように見える。
③ブラムフェット教官…ダルグリッシュ刑事とマスターソン巡査部長を警戒している。ファロンの入院中は彼女のそばで世話をしていた。ファロンは自殺だと言っている。
④テイラー看護師長…捜査には概ね協力的だが、刑事ダルグリッシュから看護学生と職員の個人情報を見せるように言われたときは一度拒んだ。実習時は同席していなかった。
⑤モラグ…住み込みのメイド。ピアースの死を悲しんでいる。ギアリング教官をやや嫌っていた。
刑事ダルグリッシュ ナイチンゲールの屍衣の原作者 P・D ジェイムズはどんな人?
P・D ジェイムズのプロフィール、生い立ち
P・D ジェイムズは1920年イングランドのオックスフォードで生まれ、2014年に94歳で死去しました。
税務調査官だった父は、いつも食事を一人で食べる家族への愛情の薄い人だったと語っています。
当時を振り返りこんな発言を。
「子供の頃はいつも怯えていたわ。家族のそういう状態が爆発して間違った方向に進んでしまうんじゃないかという恐怖心と共に生きていた。」
P・D ジェームズが14歳の時に母が重度の更年期障害で入院したため、通っていた女子高を中退し、働きながら家事や弟妹の世話をしていました。母が回復することはありませんでした。
21歳で医学部生と結婚し2人の娘が誕生したが、夫は戦地へ。帰還するも、戦時中のPTSDがあまりにひどく、精神病院に入院。その後、夫は退院することなく生涯を終えています。
夫が働けない状況の中、P・D ジェームズが一家の大黒柱となり国民保健サービスや内務省、刑事政策部署で働きながら娘2人を一人で育てました。
病院管理の学位を取るため夜間学校に通って仕事後には勉強。そんな努力の甲斐あって経済的な余裕が生まれ、40歳になってから本格的に小説を書き始め、生涯で20の物語を執筆しました。
P・D ジェイムズの作品の特徴
英国国教会主義への忠誠心の一つとして、信仰深い登場人物を必ず一人入れるのも特徴です。『ナイチンゲールの屍衣』では、ヘザー・ピアースがその登場人物かと私は思います。
病院や官僚制を舞台に複雑で多面性を持つ登場人物をきわめて緻密に書き上げるのも特徴。派手さはない分、人間の奥深い心理を映し出す作品が多いと私は思います。
例えストーリーは私たちの日常と大きくかけ離れていても、心理面だけでも共感できると私は思います。同類ドラマとの相違点は、死体を映す時間が長めで、検死のシーンがほぼ必ずあることです。
それだけ人の死をデリケートに、重く扱っていてることかと私は思います。病院勤務経験が長いP・D・ジェイムズ。多くの人の死の場に立ち会ってきた彼女ならではの表現方法なのですね。
初の出版本は42歳の時の『女の顔を覆え』で、未婚女性のためにホームを運営する女の死を捜査するストーリー。ダルグリッシュシリーズとして1985年にテレビドラマ化されました。
14のストーリーが刑事ダルグリッシュシリーズとしてテレビドラマ化されています。『女の顔を覆え』の刑事ダルグリッシュ役はロイ・マースデンでした。
・刑事ダルグリッシュ役のバーティ・カーベルはどんな俳優?生い立ちや出演作品はこちらから!
今日も最後までお読みいただきありがとうございました。
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