『名探偵ポワロ』シーズン1の#3の『ジョニー・ウェイバリー誘拐事件』(The Adventure of Johnnie Waverly) は、大きなお屋敷を舞台に起こる”珍”事件!
ポワロの謎の鼻歌も聴ける貴重な回です!謎解きをどこよりも分かりやすく解説しました。どうぞ最後までご覧ください!
ジョニー・ウェイバリーの誘拐事件 ネタバレなしあらすじ
ある大きな屋敷の元大地主マーカス・ウェイバリーから、3歳の一人息子ジョニーの誘拐予告の件で依頼を受けた。
「金を払わないと誘拐する」という身代金が書かれた脅迫文がすでに3度届いているとう。
ポワロとマーカス・ウェイバリーは捜査を依頼するためジャップ警部を訪ねるが、事件として取り扱ってもらえません。
そこで、ポワロとヘイスティングだけでマーカスの屋敷を訪ね、屋敷の事情などを探り始めた。
屋敷の工事を一時中断している事、さらに出された食事が意外に質素であることから、経済的に余裕がないのでは、とポワロは推理していた。
そんな時、誘拐を示唆する時刻(12時)だけが書かれた新たな警告文がマーカスの枕に置いてあった。
激怒したマーカスは屋敷の従業員の中に共犯者がいると言い出し、2人の従業員以外を全員解雇すると言う。
一方、ポワロは屋敷の工事中断の件が気になっていたので、屋敷の事情を聞き出すために工事業者に向かった。
するとマーカスよりも妻の方が多くの資産があるが、財布に紐が固いと言う。
そしていよいよ警告文に書かれた12時に。さてジョニーは誘拐されてしまうのか?
ジョニー・ウェイバリーの誘拐事件 解説 茶番だと分かっていた?!
この事件のカラクリは本当にシンプルで、ある部屋の壁時計の針を10分進めただけです。
壁時計に手を伸ばしてそんなことが出来るのは、この家に大きな権力を持っている者、もしくは所有者です。
なのでジョニーの誘拐脅迫文を書いていたのは、この屋敷の主人のマーカスでした。
執事と彼の姪も助っ人として協力して身内による自作自演の事件を起こしたのです。
マーカスの動機はお金でした。彼は世間体や見た目をとても気にする男で、屋敷の外観にもこだわり工事をさせていましたが、倹約家の妻が工事は不要、として中断させていました。
妻の家系は資産家ですが、マーカスは違います。
彼自身にあまり資産が無いのに世間体を気にするあまり、今回の自作自演の誘拐事件を企てて身代金という資本を調達するためでした。
屋敷の工事を再開させたかったでしょうし、他の娯楽などの為にもお金が欲しかったのかもしれません。
さて誘拐の予告時間は12時でした。
それより前にジャップ警部、マーカス、そしてジョニーは同じ部屋にいました。部屋の時計は10分進んでいます。
そして12時、正確には11時50分に屋敷外の茂みに不審者がいる、との知らせがジャップ警部に入ります。と言っても執事が報酬を与えて手配しておいた男です。
これは大変!となりジャップ警部とマーカスはジョニーを部屋において外に飛び出します。その間に執事の姪が部屋からジョニーを連れ出します。
ジャップ警部が腕時計を見ると12時を指していました。
自作自演の誘拐は見事に成功。ジョニー、ジャップ警部、マーカスがいた部屋の壁時計を見ると、12時10分を指していました。正確には12時です。
時計の針を勧めたのは、マーカスら3人の内の誰かです。
ただしマーカスの妻に見られるまずいので、食事に毒を混ぜて病気にし、家の中をあちこち歩かせないようにしておいたのです。
そもそもポワロは、なぜわざわざ誘拐”通知”をするのか、疑問に思っていました。
誘拐したければ誰にも言わずにすればいいものを、わざわざ誰かに、しかも警察にまで言うメリットは何か?
もちろん捜査を避けるためですが、今回はあまりにも”仕掛け”がガタガタでした。
壁時計の針を進めたことはもちろん、枕に「12時」の手紙を置いたこと、ついには妻が地下道の存在を言い出す始末。
地下道の存在は「家族と執事なら知っている」と言った時点でマーカスのGame overは確定していました。
ポワロが冒頭に言っていた「人間には(頭の中に)小さな警官がいます。
今回の犯人にはその警官がいないようです。」は、すでにこの一件は茶番だと半分ぐらい思っていたのでしょう。
もしかしたら身代金5万ポンドを「払えるでしょ」とマーカスに言った時点でおかしなケースだと思ったのでは?
マーカスからしたらあまりに高額だと気が引けたのでしょうか。
個人的にはヘイスティングの立て襟シャツ&革ジャンがカッコ良かった!
マイペースぶりも面白いですね。ポワロと本当に名コンビだと思います。
ジョニー・ウェイバリーの誘拐事件 キャスト、原作者のプロフィール
≪キャスト≫
①エルキュール・ポワロ…エナメル靴と胸元のブローチが定番スタイルのおしゃれな私立探偵。
私の印象は、話し方や立ち振る舞いがかわいいおじ様。
そんなポワロを演じるのは、1946年ロンドン生まれのデヴィット・スーシェ。
大当たりしたポワロ役のため、苗字をフランス語読みのスーシェに改名しました(ポワロはフランス語圏出身)。
撮影セットの本の並び順にもこだわったりと、ポワロに負けないぐらいの仕事に対して熱い情熱を持った俳優なんです。
改名するって、普通に考えて凄いことですよね!
②アーサー・ヘイスティング大尉…ポワロの助手。マイペースで、ポワロに呆れた顔をされても気にしていないところが個人的には好きです。
そんなヘイスティングを演じるのは、1945年ロンドン生まれのヒュー・フレイザー。
ドラマ『101 Dalmatians』、『切り裂きジャック』、『ファイヤーフォックス』等に出演しています。
演じるだけでなく、監督や脚本も手掛けているので実はとても多才な俳優なんです。ヘイスティング役とのギャップが面白いと私は思います。
③ジェームス・ハロルド・ジャップ警部…ポワロを慕っているのか疎ましく思っているのかイマイチ分からないロンドン警視庁の主任警部。
無表情で不愛想、でもそこが妙にいい味出してると私は思います。警部なのですが推理力はポワロには敵わない(笑)
そんなジャップ警部を演じるのは、1948年イングランド ノッティンガム生まれのフィリップ・ジャクソン。
ドラマ『ブラス』、『マリリン7日間の恋』、『鑑定士と顔のない依頼人』等に出演。
俳優だけでなく、ジャズをラジオで披露する腕前の持ち主なんです。どんな表情で演奏しているのか、個人的に興味ありますね。
④ミス・レモン…ポワロと微妙な距離を置きながらこだわりが強いポワロの元で働いている秘書。
仕事熱心でポワロから信頼されていますが、決して調子に乗らない慎重派。
そんなミス・レモンを演じるのは、1947年イングランド ランカシャー生まれのポーリン・モラン。
映画『The Good Soldier』、『The Woman in Black』、『Byron』等に出演しています。
が、私がすごく意外なのは、何とバンドを組んでいたんです!
メンバーは全員女性の『The She Trinity』というバンドでベースを担当していました!あの輪っか前髪のミス・レモンが!
しかも、1987年からプロの占術師としても活躍中。意外要素が多すぎですね。個人的には4人の中で一番興味でそそられます。
⑤マーカス・ウェイバリー…元大地主でエイダの夫。見た目や世間体を気にする男で、屋敷の外観工事をさせていたが倹約家の妻によって中断させられた。
⑥エイダ・ウェイバリー…マーカスの妻。資産家の出身だが自身は倹約家。マーカスが主導していた城の回改工事を辞めさせた。
⑦ジョニー・ウェイバリー…マーカス&エイダ夫婦の3歳の一人息子で、彼を誘拐するという警告文が父マーカスに届いていた。
⑧トレッドウェル…マーカス・ウェイバリーの執事
⑨ウィザース…トレッドウェルの姪で、メイドとしてマーカスの屋敷で働いている。
≪原作者≫
アガサ・クリスティー(1890₋1976)は、イギリス デヴォン州の裕福な家庭生まれ。
私はとても驚いたのですが、書字障害と恐らくディスレクシアもありました。
兄と姉は通学させてもらいましたが、アガサ・クリスティーだけは母の意向により通学させてもらえず。
しかし、5歳の頃から父宛ての手紙をこっそり読んで自分で文字を覚えました。
なぜ母は彼女だけ通学させなかったのか分かりませんが、自分で文字を覚えたという事はやはり優秀な方だったと私は思います。
アガサ・クリスティーの初の長編推理小説は1920年の『スタイルズ壮の怪事件』でした。
1976年に亡くなるまでほぼ毎年本を出版したパワフルな女性。毎年って、すごいペースだと私は思います。
36歳の時に11日間の失踪騒ぎを起こしたことでも有名。いかにもミステリー小説作家らしいと私は思います。
失踪した理由は、母の死や夫の浮気でひどくショックを受けていたとの諸説あり。
いくらミステリー小説の女王とはいえ、傷付く時は普通の女性と一緒なんだな、と私は思います。
この夫とは離婚し、考古学者の男性と再婚しました。やっぱり謎めいたもの好きだったのですね。
今日も最後までお読みいただきありがとうございました。
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