『名探偵ポワロ』#5の『4階の部屋』(The Third Floor Flat) は、推理舞台の鑑賞後に殺人事件に遭遇したポワロとヘイスティングが、事件の真相に迫っていく物語。
風邪のポワロが見れる貴重な回でもあります!ちょっとした会話の端っこからヒントを得るポワロの事件解決法とは?どこよりも分かりやすい解説です。どうぞ最後までご覧ください!
4階の部屋 ネタバレなしあらすじ
若い男女4人グループ(パトリシア、ミルドレッド、ジミー、ドノヴァン)は、推理舞台を観にきていました。
パトリシアはポワロのすぐ上の階に住んでおり、ドノヴァンという婚約者がいます。
舞台鑑賞後はパトリシアの部屋(36B)に集まる予定でしたが、部屋の鍵を失くしてしまって中い入れません。
そこでジミーとドノヴァンが荷物用リフトでパトリシアの部屋に窓から入ることに。
しかし部屋を間違えて入ってしまい、実際はアーテスティング・グランドという女性の部屋(46B)だと郵便物の宛名から分かりました。
ジミーとドノヴァンは慌てて引き返そうとした時、ジミーは床に横たわる女性の死体を発見。
早速ポワロは、第一発見者である彼らに、窓から部屋に入ったところからの足取りを聞き出して推理をスタート。
途中、パトリシアの美味しい手料理を堪能しながらポワロの昔の恋話もあり!
イギリス人女性とお付き合いしていたが料理が出来なかったので別れた、とのこと。
被害者の部屋に「J・F」の刺繍入りのハンカチが落ちていたこと、ポケットには「J・フレイザー」が書いたと思われる手紙があったこと、メイドの証言などから犯人逮捕を導き出します。
4階の部屋 解説 電気の質問が命取りだった?!
アーテスティングを亡き人にしたのはドノヴァンでした。2人は夫婦だったのです。
と言ってもドノヴァンは強く離婚を希望しましたが、アーテスティングが断固拒否。
彼女から一方的に離れて偽名で暮らしている時にパトリシアに出会ったのです。
アーテスティングは、ドノヴァンとの結婚は有効であるとの弁護士からの手紙をネタにパトリシアに全てを話す、と彼を脅かしていました。
ドノヴァンは耐えられず、アーテスティングを射殺。
しかしその時は、肝心の手紙はまだ配達されていませんでした。
後から彼女の部屋に戻ると決め、その前にメイドが帰宅して死体を発見しないように、死体をキッチン奥に移動して、一旦撤収。
そしてドノヴァンら4人グループは推理芝居へ。パトリシアの隙をついて部屋の鍵を盗みます。
パトリシアの部屋の前で「鍵がない」のシーンです。
ドノヴァンはジミーと共に荷物用リフトでパトリシアの部屋の窓に行きますが、わざと間違えてアーテスティングの部屋に入ります。
「部屋を間違えた」のシーンです。慌てている演技のどさくさでテーブル上の探していた手紙をジミーに気づかれないように取ってポケットへ。
ポワロの登場です。どうやって犯人逮捕に導いたのでしょう?ドノヴァン、ジミーと一緒に現場検証した時の会話がヒントです。
まずはアーテスティングの部屋の電気。ポワロと彼ら2人が彼女の部屋に入った時、電気は消えていました。
ポワロは「電気は付かない?」とドノヴァンとジミーに聞くと、ドノヴァンが「恐らく電球が…」と回答。
この言い方だと、前は電気は付いていたのに、今は電球が切れて付かない、つまりこの部屋の電気の状態を知っていることになります。
部屋に入ったことがある、とポワロは感づいたのです。
次は、ジミーの袖口に付着した血痕らしきもの。そもそもジミーは死体に触っていません。
しかも死体の口元の血液はかなり固まっていました。
ジャップ警部も死亡後数時間経っていると言っています。
つまり、ジミーの袖口に付いたものも固まっていないとおかしいです。しかしまだ液状でした。ポワロも実際触って確認しています。
何者かがジミーを犯人に仕立て上げようとしている、とポワロは思ったのです。
そんな人物は、あの状況下ではドノヴァンしかいないですね。赤い液体をこっそりジミーの袖口に付けたのでしょう。
極めつけは、アーテスティングの死体がキッチン奥に移動されていたこと。なぜ移動したか?後から戻って来る前にメイドが見つけるのを避けるためです。
つまり、犯人は再びこの部屋に来る人物なのです。その人物とはジミーとドノヴァン。どっちが犯人か?上記の電気などの理由から、犯人はドノヴァンとなるわけです。
「JF」と「Jフレイザー」の件はポワロにとってはジョークみたいなものですね。「軽率だ」と言っていましたが、ほんとにその通りでした。
ジミーを犯人に仕立て上げようとしたり、手紙で捜査攪乱しようとしたり、ポワロにとってはお遊びみたいな抵抗でしたね。
ムダに手回ししたことが徒となりました。
今回は風邪気味のポワロが観れる貴重な回でしたね!洗面器のお湯から来る蒸気で喉を潤すのが目的だったのでしょうか??
私は初めて見ましたが、当時は広く使われていたかもしれませんね。
4階の部屋 キャスト、原作者のプロフィール
≪キャスト≫
①エルキュール・ポワロ…エナメル靴と胸元のブローチが定番スタイルのおしゃれな私立探偵。
私の印象は、話し方や立ち振る舞いがかわいいおじ様。
そんなポワロを演じるのは、1946年ロンドン生まれのデヴィット・スーシェ。
大当たりしたポワロ役のため、苗字をフランス語読みのスーシェに改名しました(ポワロはフランス語圏出身)。
撮影セットの本の並び順にもこだわったりと、ポワロに負けないぐらいの仕事に対して熱い情熱を持った俳優なんです。
改名するって、普通に考えて凄いことですよね!
②アーサー・ヘイスティング大尉…ポワロの助手。マイペースで、ポワロに呆れた顔をされても気にしていないところが個人的には好きです。
そんなヘイスティングを演じるのは、1945年ロンドン生まれのヒュー・フレイザー。
ドラマ『101 Dalmatians』、『切り裂きジャック』、『ファイヤーフォックス』等に出演しています。
演じるだけでなく、監督や脚本も手掛けているので実はとても多才な俳優なんです。ヘイスティング役とのギャップが面白いと私は思います。
③ジェームス・ハロルド・ジャップ警部…ポワロを慕っているのか疎ましく思っているのかイマイチ分からないロンドン警視庁の主任警部。
無表情で不愛想、でもそこが妙にいい味出してると私は思います。警部なのですが推理力はポワロには敵わない(笑)
そんなジャップ警部を演じるのは、1948年イングランド ノッティンガム生まれのフィリップ・ジャクソン。
ドラマ『ブラス』、『マリリン7日間の恋』、『鑑定士と顔のない依頼人』等に出演。
俳優だけでなく、ジャズをラジオで披露する腕前の持ち主なんです。どんな表情で演奏しているのか、個人的に興味ありますね。
④ミス・レモン…ポワロと微妙な距離を置きながらこだわりが強いポワロの元で働いている秘書。
仕事熱心でポワロから信頼されていますが、決して調子に乗らない慎重派。
そんなミス・レモンを演じるのは、1947年イングランド ランカシャー生まれのポーリン・モラン。
映画『The Good Soldier』、『The Woman in Black』、『Byron』等に出演しています。
が、私がすごく意外なのは、何とバンドを組んでいたんです!
メンバーは全員女性の『The She Trinity』というバンドでベースを担当していました!あの輪っか前髪のミス・レモンが!
しかも、1987年からプロの占術師としても活躍中。意外要素が多すぎですね。個人的には4人の中で一番興味でそそられます。
⑤パトリシア…ポワロのすぐ上の階に住む美女。ドノヴァンと婚約している。
⑥ドノヴァン…パトリシアと婚約中の男性。
⑦ジミー…パトリシアに恋心抱いている男性。
⑧ミルドレッド…パトリシアの友達。
⑨アーテスティング・グランド…パトリシアの部屋のすぐ上の部屋に引っ越してきたばかりの女性。
≪原作者≫
アガサ・クリスティー(1890₋1976)は、イギリス デヴォン州の裕福な家庭生まれ。
私はとても驚いたのですが、書字障害と恐らくディスレクシアもありました。
兄と姉は通学させてもらいましたが、アガサ・クリスティーだけは母の意向により通学させてもらえず。
しかし、5歳の頃から父宛ての手紙をこっそり読んで自分で文字を覚えました。
なぜ母は彼女だけ通学させなかったのか分かりませんが、自分で文字を覚えたという事はやはり優秀な方だったと私は思います。
アガサ・クリスティーの初の長編推理小説は1920年の『スタイルズ壮の怪事件』でした。
1976年に亡くなるまでほぼ毎年本を出版したパワフルな女性。毎年って、すごいペースだと私は思います。
36歳の時に11日間の失踪騒ぎを起こしたことでも有名。いかにもミステリー小説作家らしいと私は思います。
失踪した理由は、母の死や夫の浮気でひどくショックを受けていたとの諸説あり。
いくらミステリー小説の女王とはいえ、傷付く時は普通の女性と一緒なんだな、と私は思います。
この夫とは離婚し、考古学者の男性と再婚しました。やっぱり謎めいたもの好きだったのですね。
今日も最後までお読みいただきありがとうございました。
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